心十郎「この真相のケースは珍しいね」
文明「ああ、犯人が無意識下で犯罪を犯していて、犯人も自分の犯行に気づいていないとはな……」
拓将「でもそんなことあるんかねー!ちょっとポケットに物を入れるとかじゃなくて、殺人だぜ殺人!」
遥輝「でも僕は美しいと思うよ?正義感の強い人格と破壊衝動を持つ人格の葛藤なんて特にね」
樹菜「……でもみんなわからなかったのに、修馬だけ主人公が犯人ってわかったのすごいね」
修馬「……ぐう……ぐう」
舞鈴「ちょっと修馬!何寝てんのよ!会議中よ!」
吹雪「修馬起きてよー!」
修馬「……ん?ああ、悪い悪い。
……ぐう」
吹雪「修馬!もう、知らないよー」
誰もいなくなった部室で1人。机から這い上がる。
あれ?みんな俺を置いていっちまったのかな?
修馬「おーい!もう誰もいないの?」
俺の声が虚しく反響する。
しゃあねえ。部室の鍵、顧問の先生に返して俺も帰るか。
鍵を持ち、鞄を担ぐ。
部室の扉を開いた。
???「……」
扉の先に“あいつ”が立っていてびっくりした!
修馬「おー、どうしたんだ?
もうみんな帰ってるから、俺も……」
???「先生……」
修馬「へ?」
???「あと……どれくらい残ってますか?」
4日目、夜
ロッジ
視点、修馬
修馬「はっ……!」
勢いよく目が開いた。
汗びっしょりの体。
何だ今の夢は……?
夢の最後、“あいつ”は何を言おうとしたんだろうか?
心に疑問がひっかかる。
だが俺は次第に周りの静けさに意識が向き始める。
夢と同じでロッジのリビングには人の気配がまるでしなかった。
吹雪?どこ行った?
貰った腕時計で、早速時間を確認する。
疲労のせいか、だいぶ寝ていたようだ。
もう夜中になっていた。
修馬「吹雪!」
……返事はない。
物音すらしない。
何だこの……
世界に自分しかいなくなったような強烈な不安感は……
修馬「吹雪!どこだ?いたら返事してくれ!」
再度声を張るが何も返って来ない。
不安がどんどん大きくなる。
時間にルーズな自分はよく寝過ごして肝を冷やすが、これほど嫌な予感はかつてあっただろうか?
どこに行った?
キッチンで飯の支度をしてくれているのか?
訪れてみたがキッチンにも人の気配はない。
そうか!トイレか!
トイレを足を運ぶ
段々歩みが早くなってくる。
早く、早く吹雪の存在を確認したかった。
毛布がかけられている心十郎の死体には目もくれずトイレの中へ声を張る。
修馬「おい、吹雪!おーい!」
……返事はない。トイレにもいなかった。
嫌な汗が噴き出す。
おいおい、じゃあどこに行くんだよ?
……まさか、拓将のとこか?
そうかそうか。
拓将はオーサーとはいえ、喉は乾き腹も減る。
優しい吹雪なら、そういう世話をかけてあげていてもおかしくないじゃないか!
俺はリビングに戻り、縛りあげた拓将がいる隣の部屋へ!
修馬「吹雪?」
扉を開き……
……驚いた。
そこは血の海になっていたからだ。
修馬「なっ!何だよ、これ……おい」
部屋の真ん中には縛られたままの拓将が。
頭がぐちゃぐちゃになっていて、辛うじて着ている服と髪の色から判断出来た。
頭を何度も鈍器で叩かれたのだろう。
修馬「ひでえ……で、でも何で?」
拓将はオーサーの筈じゃ……
いや違う。まさか吹雪が……?
舞鈴達を殺したオーサーである拓将に復讐をしたってことか?
もしくは吹雪がやっぱりオーサーで……
……何故、俺は生きている?
嫌な仮説がたくさん押し寄せる。
お、俺が寝てる間に何があったんだよ?
修馬「……あ」
そこで見つける。
拓将の手の甲の1の数字。
修馬「1?……ははは、おいおい1って何だそりゃ。
拓将が1なら、2は……だ、誰なんだよ」
震える。
そんな………
逃げるように走り出す。
吹雪!吹雪は?吹雪はどこだ!!
修馬「吹雪!!どこだ?返事しろ!!おい!!」
ロッジ内を走り回り、喉が切れそうなほど叫びあげる。
ロッジの全ての部屋の扉を乱暴に開く。
机の下。
カーテンの裏。
クローゼット。
めちゃくちゃに走り回った。
吹雪……吹雪……
ロッジにはいないのか?
島中を探し回る勢いで、俺はロッジの外に飛び出た。
……そして俺は、吹雪を見つけた。