Count 02

4日目、夕方
ロッジ
視点、吹雪

腕の中の修馬から寝息が聞こえる。
2日目の夜、朝まで聞いてしまっていた。
好きな人がくれる安心感。心地いい。

私は彼を起こさないように彼からすり抜ける。そして自分の着ていた上着を掛け布団に使った。

昨日寝てないし、ずっと眠そうだったもんね。
彼の寝顔へ微笑む。

ふふふ……おやすみ修馬。

修馬との思い出を思い出す。

一番古い記憶は私のぬいぐるみをとったり、わざと難しい話をして、理解出来ない私のことをバカにしたりと、とにかくすごく意地悪な子だと思ったこと。

出会いは3才の頃だが、もうよく覚えていない。
それは、それ以降の思い出が多過ぎるのが原因だと思っている。

小さい頃はいつも一緒にいた。
一緒にゲームしたり……
謎解きごっこをしたり……
お互いの家にお泊まりしたり……

数え切れない思い出の数。

そんな中、一際色褪せない記憶がある。

近所の子供達にいじめられていた私。
そんな時、いつもは意地悪な彼がその子供達から守ってくれたこと。

ボロボロになった修馬。
啜り泣く私。

その時に貰った修馬の言葉は今も忘れない。

修馬「泣いても何も変わらないだろバカ!……吹雪はバカだから、俺がずっと一緒にいてやるよ」

幼稚園、小学校、中学、高校、そして大学……

修馬は本当に一緒にいてくれた。

そんな彼のことが好きだと自覚したのは、かなり前からだった。

……本当は怖かった。
この気持ちを伝えると修馬はもう一緒にいてくれなくなるのではないかと。

でも好きな気持ちに嘘はつけない。

もどかしい日々は今思えば長かった。
しかし、その日々は今日をもって終わった。

これで……ずっと修馬と一緒にいられるんだね。
幸福感に目を瞑る。

そしてもう一度、無防備な修馬の寝顔に微笑んだ。

吹雪「修馬……大好きだよ」

懸念していた告白は上手くいった。

……しかしこれで終わりではない。

このカウントダウンに関しては、まだ何も終わっていない。

そう、終わっていない……

オーサーはまだ私達を殺そうと画策しているからだ。

一応念を押すが、本当に私はオーサーではない。

オーサー……
ずっと、ずっとその正体を考えていた。

その正体を特定するためにいろいろ事件を整理していた。

ここで大きな疑問が2つある。

まず1つ目。
オーサーはカウントダウンの順番を決める時、何を考えたのか?

舞鈴、文明、心十郎、遥輝、樹菜……

カウントダウンの数字は皆殺しの予告。オーサーは選べた。誰から殺していくかを。

するとここでひとつ疑問。
なぜ一番最初に舞鈴を選んだのか?

連続殺人の現場状況から考えると……
普通は後に殺す者ほど殺害難易度が上がるのは必然。
実際に、全員で固まって動くようになったり武装し始めた。
ならば安易に殺害しやすい最初の1人になぜ舞鈴を選んだ?

私がもしオーサーなら、頭のキレる部長や、腕力に自信がある修馬辺りを始めに排除しておき、比較的弱い立場の舞鈴や樹菜は後に残す。

なぜ舞鈴を一番に持ってきて、なぜ修馬をこんな後半にまで残すことにしたのか?
番号をあらかじめ決めていたなら、尚更だ。

そして2つ目。
なぜ殺す順番を、わざわざカウントダウンしている?

これは半分は答えが確定している。

その半分とは、きっとオーサーの挑戦。
ミステリー研究サークルのメンバーよ。
お前らを順番に殺す。
さあ私が練り上げたこのミステリーを解いてみろ。
……こんなところだろう。

しかしもちろんそれだけではない。
きっとトリックを混ぜてきている。

修馬も気付いたようだったが、遥輝がきっと4の番号通りに殺されていないように、まだトリックがあるはずだ。

なぜなら、今日は今日、明日は明日で状況は変わるのに、先に順番を縛ってしまうリスクを考えると、必然理由がある。

そしてこの2つの疑問には私なりの答えが出ていて、そこからある仮説に辿り着く。

この仮説が正しければ1人……
8人の中のある人物がオーサーだということになる。

オーサーは、不測の事態に対応した時にひとつボロを出した。

生まれた疑惑を確認するために、私はさっき1人になった時、ある人物のコテージへ向かった。
窓が割れていたおかげで容易に入ることが出来たそのコテージの中で仮説の確信を得た。

そう、実は私はオーサーを特定している。

みんな私を天然、天然と言うが、天然とは頭を使っていない時が多いということで、決してバカではない。
幼馴染をこのサークルに誘うくらいの推理力はあると自負している。

そしてオーサーもすごく頭がいい。

オーサーは……
狡猾でいて、先を読むことに長けていて、目的を遂行するために手段を選ばない冷酷さを持つ狂った人間。

失意……
オーサーの正体を特定してしまった時の最初の感情だった。
いつも一緒の仲間が狂った殺人鬼だったという悲しみ。

一体何を思っての連続殺人なのか。
これだけはいくら考えてもわからなかった。

そう……いつも一緒にすごした仲間を次々と殺していったオーサー

その正体とは……

コツ……コツ……

???「……くくく、くひひ」

ギィィ……

吹雪視点 完