2人で拓将をロープで縛り、ロッジに担いでいった。
縛りあげた拓将はロッジの隣の部屋で依然気絶している。
修馬「……」
吹雪「……」
沈黙。
いつ間にか昼になっており、簡単に食事は済ませたが、昨日から2人とも全く寝ていない。
今日も時計の針だけが響く。
初日に、8人で騒がしく食事をしたリビングとは遠く変わってしまった。
修馬「……いやまさか拓将がオーサーだったとはな。まだ信じられねぇ」
吹雪「そうだね……」
目線は合わさないが吹雪は答えてくれる。
さすがに疲れているのだろう。
俺もひどく眠いが、眠る気にはなれない。
修馬「なあ?」
吹雪「なに?」
眠気を醒ますために吹雪と話す。
修馬「何で樹菜のコテージが爆発した時、あの場から消えたんだ?」
吹雪「……仕方なかったの。あの状況で爆発したからには、きっと私が疑われると思った。今度こそ拓将に殺す理由が出来てしまうと思ったから」
修馬「……なるほど」
吹雪「ねえ、一応聞くけど……樹菜は?」
修馬「ああ……すまん。間に合わなかった」
重く首を振る。
吹雪「……そう」
吹雪は察してくれた。
修馬「で、その後は?」
吹雪「……浜辺の近くの草むらに隠れたんだけど、修馬と拓将の言い争う声が聞こえてきた。遥輝の死体があってびっくりしたけど、修馬が殺されそうになったのが見えたから、思い切って出ていったの」
修馬「ああ、あれは助かったよ。本当にありがとう」
吹雪「うん……」
吹雪はうつむく。
本当に吹雪がいてくれてよかった。
こいつが助けてくれなかったら俺は今頃殺されていただろう。
吹雪はやっぱり遥輝の手紙で濡れ衣を着せられていただけだったようだ。
そうだよ。幼馴染の吹雪がオーサーなわけない。
だよな……?
……本当にそれでいいのか?
眠気で回らない頭に嫌な自問が広がった。
そういや、何で俺は吹雪を外していたんだっけ?
そう部長殺しの時だ!あの夜、一緒に寝たからオーサーではないと思ったんだ。
だがこれは拓将も言ってたように眠っていた間を証明出来ない以上、今となっては怪しい。
それに吹雪なら樹菜を一番簡単に殺せたことになる。
樹菜の看病をしながら、爆弾を上手く置けばいいからな。
だがそうなると吹雪には遥輝が殺せない。
心十郎が死んでから、一度も1人にはなれていないからだ。
てか、そもそも遥輝はいつ殺されたんだ?
やっぱり拓将が遥輝を見つけ出して浜辺で殺していたというのが普通だが、何かひっかかる。
なぜならそこだけあまりにも短絡的だからだ。
でも俺から見て、拓将しか遥輝を殺せない。
遥輝は5の心十郎と3の樹菜の間に殺されたのは間違いないからだ。
……いや、待て。
なぜ今、俺はそう思った?
手の甲の番号は絶対だから?
確かにたまたま死んだ心十郎も、ふいに殺されたと思った樹菜も、結局は番号通りだったという変な信頼感があった。
この番号の固定概念こそがオーサーの用意したトリックならどうなる?
もう一度考えてみる。
例えば遥輝が行方不明になったあの朝。
あの時、すでに遥輝は殺されていたんじゃないか?
……いやありえるだろ?
だってその後、死体が見つかるまで誰も彼を見ていないんだから。
そして死体は海に沈めておき、頃合いをはかり出現させる。
手には4の数字。
きっと俺達は、5と3の間に殺されたと推理する。
海水に死体を沈めていたことで、死亡推定時刻の特定は厳しくなる。
……吹雪は、樹菜が死んだ後。
1人になれたので、海に沈めていた遥輝の死体をビーチに出現させた。筋は通る。
よくよく考えれば、吹雪はおかしな点が数点あったんだ。
初日の夜、最初に殺された舞鈴とコソコソ何か話していたこと。
さらに樹菜のコテージで、拓将に追求されたポケットの中身……
あれは樹菜のコテージに仕掛けた爆弾の起爆スイッチだったのではないか?
……本当に俺は吹雪を信用していいのか?
吹雪は依然うつむいている。
……吹雪が……オーサーなのか?