Count 09

修馬「はぁ、はぁ」

どこから、オーサーなる者が狙っているかわからない。
暗い夜道を慎重に進む。
汗ばむ右手にはハンマー。武器はこれだけだ。
道の脇には幾重にも並んだ木が不気味に揺れている。
月明かりの下に見えるビーチは真っ黒だ。
初日に8人で楽しく遊んだビーチとは到底思えなかった。

修馬「……さて、ついた」

遥輝のコテージ。
依然、明かりは点いていた。
まだ明かりを点けた者はいるのか?

修馬「ん?」

どうやらドアには鍵がかかっていることがわかる。

朝、遥輝失踪時にはこのコテージは空いていたらしい。
つまり開いていた鍵をかけた者がいるということ。
……そう、今この中に。

修馬「……ふう」

一息入れ緊張をほぐし、窓の前に立った。

修馬「せーの!」

ハンマーで窓を叩き割った!
ものすごく派手な音。島中に響いたんじゃないだろうか。

窓を開き、中を確認する。

修馬「おい!遥輝!いるのか?」

拓将「だ、誰だ!!」

中には、こちらにナイフを向ける拓将がいた。

修馬「な、何だ拓将か……
よかった無事だったんだな」

拓将「……」

拓将はポケットにさっと何かを隠した。

修馬「拓将?今、何を」

拓将「近寄るな!」

修馬「……拓将?」

拓将「こ、この島は狂ってる!」

拓将はガタガタと震えている。

修馬「どうした拓将?あのあと何があったんだ?」

拓将「……まさか本当だったとは」

修馬「拓将?どうしたんだ!遥輝はいたのか?」

拓将「ああ?遥輝なんていなかったよ。しかもそれだけじゃない」

それだけじゃない?
何だ、それだけじゃないって?
動転してる拓将に俺も焦り始める。

拓将「一体何が起きてるんだこの島で」

頭を抱えて、震え続ける。

修馬「だから何があったんだよ!拓将!」

拓将「そ、そうだ!吹雪はいるか?」

修馬「吹雪?ああ、ずっと樹菜のコテージだ」

拓将「そうか……」

拓将の目が急に鋭く変わる。
そして遥輝のコテージから飛び出し、走り始める。

修馬「おい、拓将!何があったのか説明しろよ!」

拓将「わかったんだ!オーサーの正体が」

走りながら振り返る拓将。その言葉に驚いた。

修馬「なに!とにかく待て拓将!」

追いかける。
拓将の向かった先は、樹菜のコテージだった。

拓将「はぁ、はぁ……
おい!ここを開けろ吹雪!」

乱暴に扉を叩く拓将。

修馬「拓将!」

拓将「早く開けろ!」

中から音が聞こえない。
え?おい、大丈夫だよな?

修馬「吹雪!樹菜!大丈夫か?」

吹雪「……修馬?」

吹雪の声がこもって聞こえた。
安堵の息を吐く。

修馬「吹雪!確認してきた。
遥輝のコテージにいたのは拓将だった。
とりあえず開けてくれ」

吹雪「わかった。開けるね」

中に入る。そこには……

樹菜「修馬!」

ベッドの樹菜。
はあ、よかった。

修馬「2人とも無事だったか」

吹雪「うん、拓将も無事でよかった」

拓将「おい吹雪、お前今ポケットに何か隠しただろ?」

吹雪「えっ?」

ポケットに手を入れている吹雪。
おいおい、こっちもか。

拓将「出せ」

吹雪「えっ、な、何で?」

拓将「出せこら!」

吹雪に歩み寄る拓将。

吹雪「……や、やめて」

修馬「こら!いい加減にしろ拓将!
お前さっきからおかしいぞ!」

拓将はピタリと動きを止める。

修馬「それにお前だって、さっきポケットに何か隠しただろ!……さっきから聞いてんだろが!一体何があったんだ?」

拓将「はっ!じゃあ見せてやるよ!ほら!」

拓将のポケットからは手紙のような紙が1枚出てきた。

修馬「何だこれ?」

拓将「これは遥輝のコテージに隠してあった手紙だ!読んでみろ」

何?遥輝の手紙だと?
俺は全員に聞こえるように読み上げる。

修馬「……遥輝より。
これを読んでいるあんたが、この事件の犯人じゃないことを祈る。
俺は確かにみんなの手の甲に、それぞれ数字を刻印した。
多分今後、舞鈴以外にもまた誰か殺されていくんじゃないだろうか?俺はそう思っている。
その時に、真っ先に犯人と疑われるのはみんなに数字を押した俺だ。

オーサーにハメられた。
俺は舞鈴を殺してなんかいない。
信じてほしい。

俺は一度姿を隠す。
数字を押した俺は怪しくもあり、オーサーに狙われやすい位置なんだ。わかってほしい。
そして俺は俺で、こんな目に遭わせたオーサーを追い詰める。

だがもし俺を信じてくれるなら、俺がオーサーと推理している者が誰か伝えよう。

信じるか信じないかはお前ら次第だ。

舞鈴の死体を見つけた日、俺は全員に数字を押したと言ったが実はあれは正確には違う。
使ったスタンプは実は7つだ。
俺は自分にもスタンプを押したから、8人いる俺達の中に1人だけスタンプを押すことを指示されなかったやつがいる。

カウントダウンの対象外。
そいつが犯人の目星。

そいつの正体は、夜桜吹雪なんだ!

俺は吹雪の手の甲には何もしていないんだ。
これだけは本当に信じてほしい。