修馬「拓将大丈夫かな?」
吹雪「うん……」
修馬「もう3時間は経ったぞ」
吹雪「……うん」
修馬「遥輝は見つかったんだろうか」
吹雪「……」
あれ?吹雪?
何かずっと真剣に考えている。
修馬「吹雪?」
吹雪「……ねぇ修馬」
目が合う。
修馬「なんだ吹雪?」
吹雪「どうしてオーサーは、殺す順番をカウントダウンしているのかな?」
……たしかに。気になるところだ。
俺も考えたこと。吹雪には答えがあるのか?
修馬「……さあな。わからない。
ただあるとすれば、動機に関わってるのかもしれない。生き残りに絶望与えるとかな」
吹雪は俺の顔をじっと見てる。
相槌はない。吹雪は別の意見があるのか?
吹雪「舞鈴、部長、心十郎って順番。
私さ、思うんだけど……」
樹菜「あ……なんだろあれ?」
窓の外の夜を眺めていた樹菜が言葉を漏らす。
修馬「どうした樹菜?」
吹雪「……」
樹菜「見て、あれ」
吹雪「なに?」
遠い闇の中に、光が灯っていた。
それはひとつのコテージの窓から発している。
樹菜「あの……さっきまで暗かったから、今点いたんだと思う」
修馬「誰かいるってことか。
あれは、誰のコテージだ?」
樹菜「確か……遥輝くん」
吹雪「まさか!遥輝が帰ってきたのかな」
修馬「いずれにしろ、誰かいるな」
本当に遥輝が帰って来たのか?
正直わからない。
俺は考える。そして結論を口にする。
修馬「……よし、俺見てくるわ」
吹雪「えっ、やだよ!」
樹菜「……一緒にいてよ、修馬」
修馬「心配すんな二人とも。すぐ帰って来て、守ってやるから」
吹雪「いやいや!修馬だって危ないって言ってんのよ!」
確かにそうだ。ただ……
修馬「順番を知っているかもしれない遥輝。あいつは犯人であろうが、そうじゃなかろうが俺らより情報が多いんだ。
やっぱりもう一度ちゃんと話がしたい。
これは、その最後のチャンスかもしれないんだ」
吹雪「そ、そうだけど……」
修馬「30分!きっちり30分で帰るから」
吹雪「……」
吹雪は黙る。斜め下を睨んでいる。
修馬「あ、吹雪?」
吹雪「……修馬のきっちり30分なんかあてになんないよ。時間守れないくせに」
ボソボソ言っている。
修馬「……なんか言ったか吹雪?」
吹雪は唇を尖らせている。
スネているのか?……何で?
修馬「吹雪……何スネてんだ。お前には樹菜を守ってもらいたいんだけど駄目なのか?」
吹雪「……」
急にどうしたと言うのか?
修馬「吹雪、ここから生きて一緒に帰るためだ。わかってくれ」
吹雪「……それ約束?」
吹雪「ああ、約束だ」
この言葉に吹雪の表情は緩む。
吹雪「……うん、わかったよ」
修馬「よし!じゃあ鍵をしっかりかけて、俺が帰って来るまで絶対開けるなよ」
吹雪「うん……でも絶対!絶対帰ってきてね!」
修馬「当たり前だ!そう簡単に死なねえよ俺は」
吹雪「……うん、気をつけて」
修馬「じゃあな!鍵かけろよ!」
俺は闇の中へ、走る。
3日目、夜
樹菜のコテージ
視点、樹菜
樹菜「……行っちゃったね」
吹雪「……うん」
樹菜「大丈夫かなぁ」
吹雪「……」
修馬の出て行った扉を見つめる吹雪。
その吹雪の背中を私は見つめる。
修馬がいなくなることがよっぽど不安なのだろうか?
樹菜「あ、あの?吹雪?」
吹雪「……はあ、昔からなのよ修馬は。自分勝手で、面白くないし、時間守んないし、いっつも自分が正しいと思ってて、人の話なんて聞かないんだもん」
吹雪が扉に鍵をかける。
樹菜「さすが幼なじみだね」
吹雪「……うん」
樹菜「どれくらいの付き合いなの?」
吹雪「どれくらい、かな?」
吹雪は振り返る。考えるそぶり。
樹菜「……いつから好きなの?修馬のこと」
吹雪「えっ!何で知ってるの?」
まじまじと見つめられる。
樹菜「あ、えっと……部室でプレゼントの話をしてるの聞こえちゃって」
吹雪「うそ……恥ずかしいな」
樹菜「恥ずかしがることないよ」
吹雪「うぅ……」
困っている吹雪。相変わらず可愛い。
私は迷った末、言ってしまう。
樹菜「だって、私も……私も修馬のこと好きなんだから」
吹雪「えぇ!本当?」
樹菜「うん。最近気付いたんだけど」
吹雪「えー、じゃあライバルじゃん私達」
樹菜「ふふ、そうだね」
吹雪「はは」
気まずい沈黙。それを私が破る。
樹菜「……私ね」
吹雪「ん?」
樹菜「みんなのことも大好きなんだ」
本心だ。
自分の顔は今、赤いだろう。
吹雪「……うん」
樹菜「なのに……たまに自殺したくなる時があって……」
吹雪「えっ!そうなの?」
樹菜「あ、うん……あの、私実は鬱病で。
よく風邪で学校休んでたでしょ?あれ実は、病院とか行ってて……」
吹雪「そうだったんだ」
樹菜「みんなと一緒なら幸せなのに、少しでも嫌なことがあればすぐ死にたくなってさ……」
涙が溢れる。
樹菜「でも私、はっきりわかったの」
吹雪「何を?」
樹菜「……私、本当は死にたくなんてなかった……」
吹雪「樹菜…」
樹菜「ただのわがままだった……私、みんなと生きていたかった」
胸いっぱいの感情。涙と共に溢れてしまう
樹菜「ううう」
私は布団をかぶり、涙を隠す。
3日目、夜
樹菜のコテージ
視点、なし
布団に埋まる樹菜。
それに対し、吹雪は目をつぶった。
そしてその目が再び開いた時。
スイッチが切り替わったように冷たい目で樹菜を見下ろしていた。
そしてそのまま樹菜へゆっくりと近寄る。
樹菜はその様子に気付いていない。
そして吹雪はポケットの膨らみへ、静かに手を伸ばした。