3日目、朝
修馬のコテージ
視点、修馬
拓将「修馬!おい起きろ!無事か?」
ドアをドンドン叩く音に対して不機嫌に起きる。ふらつく足取りでドアへ。
修馬「……拓将か。はいはーい」
ドアを開き、目を擦る。
朝日が眩しい。
拓将「よかった。お前は無事か……って、うわ!」
拓将は俺の背後へ目を向け叫んだ。
修馬「……へ?」
恐る恐る振り返り、全てを理解した。
吹雪「すう……すう……」
可愛らしく掛け布団に潜む吹雪。
拓将「お前……なんてふしだらな!
このチャラ男!女好きやろー!」
顔を真っ赤にする拓将が、可愛かった。
修馬「いや、違えよ!昨日あいつがだな!」
拓将「いやそんなことより!
第二の殺人が起きやがったんだ」
修馬「……なに?」
一気に目がさめた。
被害者のコテージの扉を勢いよく開く。
心十郎「やあ、おはよう。修馬くん」
部屋の真ん中に立つ心十郎。
修馬「心十郎……本当に死んでるのか?」
心十郎「ああ、見てみなよ」
真っ赤なベッド。
掛け布団をめくり上げる。
修馬「う……」
部長の文明の亡骸だった。
心十郎「状況を考察すると、寝てるところに心臓をナイフで一突きにされた、かな」
吹雪「う、そ、そんな……」
寝てるところを、だと?
ある疑問が生じる。
修馬「……鍵をかけてなかったのか部長は?」
心十郎「これだよ」
心十郎の親指は、コテージの窓に向いていた。
修馬「これは?」
心十郎「窓ガラスが割られてるんだ。音が出ないようにガムテープを貼ったあともあったね」
修馬「ここから侵入されたのか……」
拓将「いやいや!中の部屋で寝てて窓が割れたら、いくらなんでも起きるだろ!」
心十郎「こういうのはどうだい?昨日部長は解散する前、すごく眠そうだったのを覚えているかい?」
修馬「ああ……」
心十郎「あれさ、昨日の部長の夕食に睡眠薬が入れられていたとしたら?」
拓将「睡眠薬か……確かにそれなら、ちょっとやそっとのことじゃ起きないもんな」
修馬「いや、ちょっと待てよ!……夕食てことは、お前……」
吹雪「……そ、それって」
拓将「へ?なんだっけ?」
心十郎「くくく、夕食はみんなで手伝って作ったよね?これは外部犯の付け入るスキがない事象。つまり犯人は僕達の中の誰かって事実が確定したのさ」
拓将「……まじかよ」
修馬「つまり舞鈴も他殺決定ってことか……」
目の焦点が合わない。信じたくなかった。
吹雪「ね、ねえ」
心十郎「ん?」
吹雪「遥輝と樹菜は?」
そう言えばいない。
拓将「樹菜はロッジにいる。俺が指示した。は、遥輝は……」
何だその言い方は。
修馬「え?なんだ?遥輝はどうしたんだ?」
心十郎「ふふふ、消えたんだって」
修馬「遥輝が!」
心十郎「自室はからっぽ。ふふ、消えるマジックなのかな。どこに行ったんだろうね。彼、昨日怪しかったしね」
遥輝が消えた?
やはり、あの数字。何か関係あるのか。
それと同時にあることを思い出す。
修馬「そうだ!部長の手」
拓将「あ、そっか!……見るか」
文明の布団に隠れたままの手を出した。
拓将「……うそだろ」
心十郎「ふふふ」
6の数字が左手の甲に刻まれていた。
文明の死体に毛布をかけて、ロッジに移動した。
心十郎「ロッジにも遥輝はいないみたいだね……」
拓将「ちっ、遥輝のやろうどこ行ったんだ!」
吹雪「樹菜大丈夫?目が赤いよ……」
樹菜「昨日結局怖くて眠れなくて」
樹菜は視線を下げたまま心なく答える。
樹菜も文明の死が信じられないようだ。
拓将「舞鈴が7で、部長が6か。
……なあこれってさ、カウントダウンしてんじゃね?」
修馬「カウントダウン?」
拓将「そう、5、4、3、2、1って感じに」
樹菜「え?……なにそれ」
察した樹菜の顔が青くなる。
修馬「やめろ拓将!その言い方じゃあまだあと5人死ぬって言い方だ!」
拓将「いやいや、だってそうだろ?俺達も今、俺、修馬、吹雪、樹菜、心十郎で5人だぜ」
心十郎「消えた遥輝を入れれば6人だよ」
拓将「あ、そうか。1人余るか」
心十郎「……その余った1人が犯人とか?くく」
修馬「心十郎も言い方に気をつけろ」
心十郎「ふふふ、わかってないなー
みんな口には出さないけど、もうこれは確定した事実じゃないか。つまり、このミステリー研究サークルのメンバーに、現実のミステリーを書いたオーサーがいるってことさ」
オーサー……作者か。
心十郎「僕達はオーサーの用意した登場人物。オーサーの書いたミステリーの順番に殺されていくのさ」
修馬「そんなばかな……」
吹雪「例えそうだとしたら、数字を書いた遥輝くんにもう一度話をちゃんと聞きたいよね」
修馬「そうだな」
心十郎「でもその遥輝は行方不明だよ」
拓将「あのやろ!やっぱりあいつが犯人なんだ!だから逃げたに決まってる!」
修馬「待て拓将、決めつけるな」
拓将「ちくしょう、なら次は5のスタンプを押された奴が殺されるってか!」
樹菜「ご、5」
吹雪「……5」
みんな手の甲に目を落とす。
吹雪「う……」
樹菜「あ、ああ」
手を震わせ、泣く樹菜。
修馬「そんな……死ぬ順番なんて」
吹雪「まるで……予言」
拓将「はっ、でもな!そんな予定通りにやられてたまるかよ!簡単に殺されてたまるもんか!俺を殺しに来た奴は返り討ちにしてやるからな!」
心十郎「返り討ちに……ね。ふふふ」
拓将「あ、何だてめぇ?」
心十郎「いやね、実はさ。昨日の夜に僕見ちゃったんだよね」
修馬「何をだ?」
心十郎「ふふふ……人を殺そうとしている犯人を見たんだ。僕ね、オーサーが誰か知ってるんだ」
修馬「……なに?」
全員が言葉を失った。