Count 12

樹菜のコテージへ着く。

拓将「すごい血のにおいだな」

修馬「吹雪……樹菜の容体どうだ?」

ベッドで眠る樹菜。
脇で救急箱を広げる吹雪。

吹雪「とりあえず止血はしたよ。
今は命に別状はなさそうだけど手首がない状態のままだから、一刻も早く医者に見せないと……」

拓将「そうか……」

今は……か。
額に汗が浮かび苦しそうな樹菜。
たまにうなされている。

拓将「樹菜……バカなことしやがって」

バカなことだ。しかし……

修馬「ただ樹菜のこの行動は大きなヒントになった」

拓将「あ?」

修馬「いいか?オーサーは、本来3の順番の時に樹菜を殺す予定だった。しかし今その情報が漏洩した」

拓将「だからなんだ?」

修馬「次に殺されるのは4の数字を持つ者。なら樹菜はまだ殺されないし、殺される者が誰かわかっていれば守ってやることができる」

拓将「……そうか」

修馬「ここまでカウントダウンを完璧に進めてきたオーサーなら、殺す順番を守ってくるはず。なら樹菜を守り抜くことは、カウントダウンを進ませないということで、俺たち全員を守ることにも繋がると言っていいんじゃないか」

吹雪「修馬……ちょっとひどいよ」

修馬「え?」

吹雪「まるで樹菜が手首を切ったことを好都合みたいに言ってる。樹菜はもう二度と本も読めないかもしれないってのに……」

驚く。吹雪が俺を否定してくるのは珍しい。

拓将「いや、でも確かに修馬の言う通りだわ」

拓将の肯定が入る。

拓将「何にせよ樹菜の行動は、オーサーのクソ野郎からしたら計算外の事態だ。まだ殺してないやつの番号の判明なんて、透明の数字の意味がなくなるからな」

吹雪「……確かにそうだけど」

拓将「今まで誰がターゲットかわからないことがストレスになっていたが、誰を狙ってくるかわかってるなら、返り討ちにしてやれるだろ」

吹雪は俯く。

吹雪「……でもひとつ問題は残るんじゃない?」

拓将「は?なんだよ?」

吹雪「樹菜が3。そしてとりあえず行方不明の遥輝がオーサーだと仮定したとしても……」

拓将「ああ」

吹雪「私、修馬、拓将の3人の数字は、1、2、4のどれかってことになるよね?」

修馬「そうだな」

吹雪「結局誰かわからない4の人が殺されてから初めて実行出来る作戦になるなって思っただけ」

修馬「確かに……」

全員黙る。
この3人から1人欠けたとしたら、2人になるということ。果たしてそれで樹菜を守り切れるのだろうかと不安になる。

拓将「はあ、埒があかねぇや。結局次は誰だってビクビクは変わらねぇ。
……俺がケリをつけてやるわ」

修馬「拓将?」

拓将「今言ってた樹菜を守る作戦はとりあえずお前らでやればいい。俺は今からこの島のどこかに隠れてる遥輝を探してくる」

また突拍子もないことを言い始めた。

修馬「……探してどうするつもりだ?」

拓将「あいつは実際に俺達に数字をつけた張本人だから、あいつを捕まえて問い詰めりゃ自分の数字がわかるかもしれねぇ」

修馬「でもあいつ自身がオーサーの可能性は高いだろ!」

拓将「それこそ好都合さ……その時は俺があいつを殺して終わらせてやるよ」

バタフライナイフを見る拓将の瞳に身震いする。本気のようだ。

拓将「それにな、樹菜が3ってわかったことはひとつの情報だが正直俺は焦ったぞ」

修馬「な、何が?」

拓将「俺が次の4の可能性が上がったわけだし、それに俺から言わせれば修馬と吹雪は………」

そこで何故か言い澱む拓将。

修馬「俺ら2人が?」

拓将「……何でもねぇよ」

何だ?何が言いたかったんだ?

拓将「じゃあな」

拓将は樹菜のコテージから出ていってしまった。