修馬「なんだこれ、本当なのか」
樹菜「……え?うそでしょ」
樹菜があからさまに吹雪を警戒する。
拓将「どうだ?俺達は死ぬ順番が決まってて、次は誰だ?自分か?とびびってるが、この女だけは対象外だとよ!」
修馬「吹雪……」
拓将「何でだ吹雪?おら!」
拓将が詰め寄り、吹雪は首を振る。
吹雪「そ、そんなこと言われてもわかんないよ……私だってどうしてか」
拓将「おい樹菜!」
拓将が樹菜へ顔を向ける。
樹菜「あ……はい」
拓将「俺と修馬がいなくなったあともずっと吹雪といたのか?」
樹菜「う、うん」
拓将「何か怪しいことしてなかったのか?」
樹菜「……してなかったと思うけど」
拓将「殺されかけたとかは?」
修馬「おい、拓将!」
拓将「うるせぇ!」
樹菜は真剣な表情を拓将に向ける。
樹菜「何もされてない。
むしろ吹雪は何度も手の心配してくれたし、修馬が行った後もずっと傍にいてくれた。それは間違いない」
拓将の剣幕にも負けずはっきり言ってくれる。吹雪に感謝している気持ちは本物なのだろう。
拓将「……まあそうだろうな。よく考えりゃ樹菜はまだ殺される順番ではない。
それにこの状況で樹菜を殺しちまうと、誰が犯人か一目瞭然だもんな」
吹雪が眉をひそめる。
修馬「お前いい加減にしろよ!吹雪がオーサーなわけないだろう!」
拓将「は?何でだよ?」
何で?そんなの決まってるだろ。
だって吹雪だぞ?俺の幼馴染がオーサーなわけないじゃないか。
ただこれは残念ながら俺の主観だ。
こんな時、部長だったら冷静に……
そ、そうだ。部長だ!
修馬「吹雪は部長殺しの時にアリバイがあるだろ!」
拓将「お前と寝てたってやつか?」
修馬「あ、ああ……そうだよ。
お前だって朝見ただろうが!」
拓将「一緒に寝始めただけだろ?
……忘れたのかお前?」
修馬「な、何がだ?」
拓将「オーサーは睡眠薬を持ってたんだぜ?あの日、お前も睡眠薬を飲まされてた可能性は?寝てる間に常に吹雪が横にいたという証拠はあるのか?」
修馬「……そ、それは」
言い返せない。
拓将……侮ってた。こいつ結構考えてる。
命懸けの状況だ。いつまでも馬鹿な奴なんていないんだ。
拓将「決まりだろ」
拓将はバタフライナイフを出し、吹雪へ歩む。
吹雪「えっ」
拓将「問いつめてやる」
樹菜「いや!」
拓将は吹雪の腕を掴む。
樹菜「え?何しようとしてるの?
や、やめてよ!」
拓将「まだ殺しやしねぇよ!来い!」
吹雪「い、痛い!離してよ」
拓将はそのままコテージの外に引っ張り出そうとする。
拓将「抵抗すんな!」
吹雪「うう……」
修馬「おい!やめろ!
樹菜。とりあえず拓将を説得するから、鍵を開けて待っててくれ」
樹菜「う、うん」
樹菜のコテージの前。
拓将「何でみんなを殺した?」
吹雪「わ、私じゃない!」
拓将「ならオーサーじゃない証明を具体的にしてみろ!」
吹雪「ぐ、具体的に?」
拓将「出来ないならお前がオーサーだ」
吹雪「そ、そんな乱暴だよ」
修馬「まず証拠が不十分過ぎること」
吹雪を掴む拓将の腕を掴み、言う。
そうさ、みんなこんな状況なら死ぬ気で考える。それは俺も同じだ。
拓将「あ?」
吹雪「……修馬」
修馬「拓将、お前が言ってるのは全部推測だろ?吹雪に証拠を要求するなら、お前も証拠を見せろ」
拓将「あ?証拠はこの手紙だ!」
もうぐしゃぐしゃになった手紙を乱暴に突きつけられる。
俺はもう一度冷静に手紙を見て答える。
修馬「その手紙、遥輝が書いたって証拠は?遥輝の筆跡じゃないとは言わないが、筆跡を隠そうとしてるような書き方に見えないか?
遥輝が信じてもらうために書いた手紙なら、何故筆跡を誤魔化そうとするんだ?」
拓将「ぐ……」
手紙を確認し、唸る拓将。
……まだだ。
修馬「もしオーサーが内部分裂のために用意した罠ならば、まさに今はその術中だぞ」
拓将「くっ」
修馬「むしろその手紙に犯人だと書かれている吹雪は最も犯人ではないだろう。
……わかったら、吹雪を離せ」
吹雪「修馬……」
吹雪の目に涙が溜まりかけている。
心配するな。濡れ衣を晴らしてやるから。
拓将「でも」
修馬「でも何だ?吹雪がオーサーだって証拠はもうないじゃないか……」
突如、雷のような発光がしたと思うと、爆音と熱風が俺たち3人を押し倒す。
修馬「な、なんだ!」
振り返ると、樹菜のコテージが猛火に包まれていた。
吹雪「う、嘘。まさか……爆弾!?」
拓将「おい……ま、まだ中には樹菜が」
修馬「そんな……樹菜!」