拓将のコテージの外。
コテージの窓際に2人並び座る。
あの後、一番近かったここに移動した。
外にいる理由はあの爆弾だ。
あれを見た直後にコテージの中に入りたいと思う奴はいないだろう。
拓将「……やっぱり吹雪がオーサーじゃねぇかよ」
空をぼんやり見つめる。
少しだが青を取り戻そうとしている。
拓将「俺達が樹菜のコテージを出てった後、吹雪はベッドで寝てる樹菜の目を盗んで爆弾を仕掛けたんだ」
永かった。
もうすぐ夜が明けてくれそうだ……
拓将「そしてコテージから出た時に、ポケットの遠隔スイッチで爆弾を起動した。
俺らだって危なかったんだ!
だってだぞ?吹雪と樹菜2人がいた時は爆発しなかったのに、樹菜1人だけになったら爆発するなんておかしいと思うだろ?」
……おいおい吹雪がオーサーなわけないだろ。
拓将はまた間違えているな。
拓将「修馬?……おいしっかりしろ!
樹菜まで死んで、幼馴染が殺人鬼だったなんてショックだろうが、生き残るためにも気をしっかり持てよ!」
修馬「……いや、すまん。でも遥輝がオーサーの可能性も消えたわけじゃないだろ」
そうさ、吹雪より遥輝の方が怪しいだろうが。あの怪しい手紙をオーサーの遥輝自身が書いた可能性だってある。
拓将「まあ、そうだな……いずれにしろもう4日目の朝だ。明日の朝には助けが来る」
修馬「ああ」
そう、あと1日。
あと1日耐えられれば、オーサーのシナリオから生きて帰れる。
修馬「オーサーか……」
拓将「ん?」
修馬「いやさ、そういやオーサーはカウントダウンの順番を破ったんだな」
拓将「確かにな。5の心十郎の次に3の樹菜だもんな」
そう、5の次が3……
修馬「樹菜が番号を露呈させたからか?
あれがあったから、もうカウントダウンなんてやめちまったのか?」
拓将「……俺はオーサーじゃねぇからわかんねぇよ」
修馬「くそ、だからって油断してた……
常にちゃんと守ってやれていれば。
本当にごめん、樹菜」
拓将「ちっ……」
また涙が出そうになるが堪える。
そうさ、堪えろ。
まだ終わってない。しっかりしろ!
拓将が言うことにそこだけは同意だ。
チラッと左を見る。
拓将「……」
拓将は森を警戒しているが、俺とも一定の距離をとっているようだ。
しかし、拓将……拓将か。
こいつがオーサーの可能性はないよな?
もし拓将がオーサーなら樹菜のコテージに爆弾をいつ仕掛けたという話になる。
遥輝を探しに行くと言い、単独行動をとった時なら可能か?
あの爆弾はコテージの中か外、どちらに仕掛けられてたかはっきりわからないしな。
……いや、そもそも拓将は人を殺す順番を始めから指定するような狡猾な殺人鬼像に当てはまらない。
要はそんなに賢くないんだ。
それに遥輝のコテージで出会った時、拓将はとても怯えていた。
あれが演技とは思えない。
そう、拓将はオーサーではないだろう。
ただ、5の次に3……
これだけが心に残る。
ある可能性が頭をよぎる。
もしこの仮説が正しかった時、オーサーは拓将ということになる……
俺の汗が地面に吸い込まれた。
まだ気を許してはいけない……
4日目、早朝
拓将のコテージ前
視点、拓将
俺は右の修馬をチラッと見る。
しかし、修馬……修馬か。
大丈夫だよな?
こいつはオーサーじゃねぇよな?
……いや、大丈夫だ。
こいつがオーサーなら、もう俺は殺されている筈だ。
ちょっと前の話だが……
サークル中に一度些細なことで俺がキレちまった時に、修馬に取り押さえられた。
こいついつも眠そうにしているが、腕は確かでたまに頭もきれることを知っている。
オーサーはカウントダウンをやめた。
つまり俺はいつでも殺されうる。
修馬がオーサーなら、今こうしている理由がない。
……だから大丈夫なんだ。
目を瞑り、息を吐く。
修馬はぼんやり空を見ている。
ちっ……
腑抜けになりやがって
もういざとなった時はお前しかいないのに、しっかりしやがれってんだ。
しかし対称的に俺が冷静になれてよかった。
遥輝のコテージで、修馬と再会した時の俺はかなり冷静さを失っていた。
……あの時、あんなものを見ちまったからだ。
みんなと別れ、一人で遥輝を探しにいった俺は、まず樹菜のコテージの近くに潜み3人の会話を盗み聞きした。
実は俺はあの時、修馬と吹雪両方がオーサーの可能性を考えていたからだ。
お互いにアリバイを立証し合ってたのもそれなら納得がいく。
もしそうなら樹菜が戦力外になった時点でら俺はいつでも殺される……
樹菜には悪いがああいう行動となった。
しかしその予測は外れていたみたいだった。3人は何も変わらず会話していただけだった。
俺は自分の予想が外れ、舌打ちしその場を離れる。
となると、俺は宣言通り遥輝を探すために島をくまなくまわった。
ビーチ、ロッジ、各コテージ、バタフライナイフ一本で、夜の闇の中探した。
そこで俺は気づく。
舞鈴のコテージに入ろうとした時に、矛盾を感じた。
舞鈴のコテージには鍵がかかっていた。
誰も鍵をかけるなんて言ってなかったし、しかも何故鍵をかける必要がある?
……遥輝なのか?
考えた末、窓を割り強引にコテージに入る。
そこで見てしまった。
めくれ上がったベッドの掛け布団。
そう、確かにベッドに寝かせていた舞鈴の死体がなくなっていた。
……何で、ない?
そこで思い出す。
舞鈴が幽霊になり夜にみんなを殺すという心十郎の話。
……震えた。
まさか本当に死んだ舞鈴が夜な夜な動き出し、ご丁寧に鍵をかけて人を殺しに出かけているというのかと。
走って逃げた。
外には舞鈴か遥輝が?
あの3人の中にはオーサーが?
もうどこに逃げればいいのかわからなかった。
そして、身を隠そうとたまたま入った遥輝のコテージで俺はあの手紙を見つけた。
そこで修馬と再会したのだった。
……今思い出してもゾッとする。
あれは一体何だったんだろうか……
何かの間違いであってほしい。
だが幽霊なんているわけない!
いるのは俺達を殺そうと企む異常者オーサーだ。
そうさ……吹雪。
必ずぶち殺してやる!
拓将視点 完
4日目、早朝
拓将のコテージ前
視点、修馬
空が青く見える。
……待ってたよ朝。
修馬「……?」
朝日に目を向けた時、俺はあるものを見つけてしまう。
修馬「……なあ拓将?」
拓将「ん?」
修馬「あれ……ビーチに何か浮いてるの見えるか?」
拓将「ああ」
修馬「なあ、あれ……人間じゃないか?」